日曜日に北陸中医薬研究会１１月定例会に行ってまいりました。

本日の講師は仝（トン）選甫中医師。

河南省の河南中医薬大学出身で、現地で内科医を１０年、耳鼻科医に５年従事された先生です。

河南省は中医学（中国伝統医学）には必読書である傷寒論を書いた張仲景（南陽市／２１９年没）が出身でもあります。ちなみに傷寒論は江戸時代の日本の医者にとっても必読書ともなっていました。

この日は弁証論治の重要性、川芎茶調散の臨床応用、亀板（亀の甲羅）、哈士蟆油（ハシマ油／カエルの卵管）などの製剤の活用法など、多岐に渡って指導頂きました。


特に弁証に関しては

明の時代の末期に活躍した医家・張景岳の問診術として十問歌を例に挙げ、改めてしっかりと問診することの大切さを指導頂きました。

中医十問歌より

・一問、寒熱　・二問、汗　・三問、頭身　・四問、二便　・五問、飲食
・六問、胸腹　・七問、耳　・八問、咽頭　・九問、病歴　・十問、病因（内在的な発生理由）

また「婦女述必問経期、遅速閉崩皆可見」とあり、１６００年前後の遥か昔の時代から、【婦人の場合は必ず生理周期や出血の状況を確認せよ】と述べていることに、中医学の弁証の重要性を再確認させられました。

これからの寒い季節には体調を崩しやすい方もたくさんいらっしゃると思うので、これまで以上に日々の問診と説明をしっかりして皆さんの健康に役立ちたいですね。

最終日は当店でも人気の婦宝当帰膠（ふほうとうきこう）の生産工場の視察の為、中連特薬グループにお邪魔しました。

婦宝当帰膠は妊活のサポートや、生理痛、生理不順、頭痛、冷え、腹痛、めまい、更年期障害など名前のごとく女性にとって宝と呼べる漢方薬です。
構成生薬としてメインとなるのが当帰。セリ科の植物トウキの根を乾燥した「当帰」は、中国で「婦人の妙薬」として、広く知られている生薬です。昔、長く遠征に出かけているご主人を持つ 奥さんが「いつ帰ってくるのだろう？」という不安から生理不順に……。とある草の根（当帰）を煎じて飲んだところ、「【当】然のように生理が【帰】ってきた」という言い伝えがあります。このように当帰は、昔からとくに生理不順に多く用いられてきた生薬です。

中連特薬グループにある施設は５５００�uもの敷地に何棟もの工場が乱立しており、そこには２０００億円近い金額が投資されているそうです。
またISO規格に認定を受けており、国際基準に準じた素晴らしい施設でした。
こちらでは３００種類以上の漢方薬が製造されており、中国国内向けの保険適用の漢方薬の製造をはじめ、日本やそれ以外の世界の国々へたくさん輸出しているそうです。

漢方薬を生産するこのような大きな建物がいくつもある。

敷地内の道路も巨大。

施設内はとても想像以上に清潔で、生産管理も全てシステム化されており温度、流速、量など全てがデジタル管理が徹底されていました。
婦宝当帰膠の生産は１つのタンクで２tの原材料を使用し、そこから７０００本の製剤が生産されるそうです。
とても素晴らしい施設で生産されていることが分かり、またそれに以上にそこに関わる方々がとてもプライドをもって仕事に取り組んでいることが知ることができ、とても価値のある視察となりました。

こちらでは当店で扱う婦宝当帰膠や逍遥丸、塊角丸が製造されていました。
正式名称の「婦宝当帰膠B」のBは武漢市のBであることを初めて知りました。

視察後に工場の方との交流を終え、その後工場内の社員食堂でお昼を摂らせて頂きました。
ここでの食事が近くの中華料理へ行くよりよっぽど美味しくて感激。
我々視察団の為にわざわざ工場に働く方々のお昼の時間を遅らせてまで対応して頂けたことに申し訳なく感じながらも、そのおもてなしの心は決して日本のそれに全く引けを取らないと感じました。

視察を終え、少し観光。市内にある東湖に行きました。
その湖で小さな小型ボートで遊覧するサービスがあったのですが、たった１人で乗船の交渉をしました。
もちろん日本語も英語も通じるはずもなく、とにかく手に取ったペンとノートで「１０分、此所、戻」という正しいのかどうかも分からない言葉と身振り手振りで何とか交渉し、降りて戻ってくるまでドキドキした経験はとても良い思い出となりました。

研修最終日の晩餐は、中連特薬グループの関係者の方を招いて豪華なディナーだったのですが、中国式のおもてなしである「白酒」で何度も杯を酌み交わす作法にやられて料理を堪能するどころでなく、お酒に溺れてしまいました。

とてもハードでしたがとても内容の濃い研修となり、これからの日常業務にとても為になるものとなりました。
同時に現地の方々と初めて触れ、そのおもてなしの心や振る舞いもとてもポジティブなものばかりで、そういった面でも本当に充実した３日間となりました。

来年の３月には成都市の研修も控えているので、今からそれも待ち遠しくなりました。
本場の生パンダに触れられたらいいなー

【番外編】

滞在中に地元のスーパーに寄りました。
薬局が併設だったのですが、そこに当店でも人気の「板藍根」が！！！
これからの季節風邪のひき始めや、予防に最適ですよ！
それにしてもこの「ちびまる子ちゃん」は正規のものなのだろうかが疑わしい（笑）

こっちも日本と同じく火事の際は「１１９」へ

やはりこちらの薬局は漢方の充実度が半端ない。
ある意味羨ましい。

2日目は湖北省中医院へ。

中医院とは漢方専門の病院で中国では中医院がいくつも存在します。
多い病院だと年間患者数が４００万人を超えるところも。

湖北省中医院も外来と病棟があり、専門科は下の写真の通り日本の総合病院並みにあります。

この日はその中から婦産科の病棟と外来で研修させてもらいました。

湖北省中医院は中国でも産婦人科がとても優れており有名だそうですが、ここでは「中西結合（中医学と西洋医学の混合）」を取り入れて、中医師（漢方の医師）が必要とあれば外科手術も行っています。

病棟研修では劉彫鴎先生に指導頂きました。
１人目に研修させてもらった入院患者さんは不妊症で入院していました。
３６歳女性で生理不順、月経期には大量に出血、内膜も13mmと厚めで子宮内にポリープがあり、卵管検査では両方が詰まっている状態でした。
おそらく子宮内膜増殖症を罹患した患者さんということでした。
数日前にポリープの除去と卵管の手術を終え、現在は入院しながら手術後の癒着予防と、卵管の開通、生殖機能の改善を目的に漢方での治療を施していました。
特に術後の癒着防止には、生薬を煮出して作った薬草湿布をお腹に当てたり、薬液を直腸から直接作用させる浣腸を使っていたことが、日本ではなかなかお目にかかれない治療法でした。浣腸は内服薬による胃の刺激を避ける方法で、４０℃ほどの薬液を短い人は１５分、長い人は２時間も投与するそうです。
脈が沈・滑で、舌が暗、歯痕で薬液には散寒活血、活血化於を治法としてました。

２人目は３５歳の女性で、妊娠後の流産防止と安胎回復の目的の患者さんでした。妊娠５０日目でつわりが酷く、基本として寿胎丸や生薬の竹如や柿蔕などを使うそうです。ただし、それでも漢方が飲めない場合はビタミンCやB６で嘔吐を緩和するように処置するそうです。
妊娠後のつわりはHCGの数値が正常値内で高く出る方に起こる現象であり、それは言い換えると流産しにくい状態とも言え、これ自体決して悪いことではないので無理に漢方で治療するということはしないそうです。

その後、外来棟に移動して、婦人科で研修しました。
担当医は老中医の姜恵中先生。御歳７８歳の女性の先生です。
中国では有名な先生は何歳になっても、本人が希望すれば現役でやれるそうです。
姜老中医は１日３０名限定で外来患者を診るそうです。それもすぐにネット予約で埋まってしまうそうです。

外来の相談内容は、妊娠希望、早期閉経、多嚢胞性卵胞症候群、生理不順、子宮頸部炎症、卵巣嚢腫、不正出血、内膜ポリープ、無月経、更年期障害など様々でした。１７名の外来患者の中で４名が多嚢胞性卵胞症候群の方がいたのは驚きで、中国も経済の発展とともに生活習慣が大きく変化し、そのことが原因で増えている病症なのかなとも感じました。

処方も伝統的な煎じ薬で出すのではなく、煎じたエキスを顆粒にしたエキス剤を主流にしているそうです。若い人は煎じ薬だとなかなか飲んでもらえないというのは日本も中国も同じような状況のようです。
施設は決して新しいとは言えませんでしたが、外来の予約システムや漢方薬の処方の指示などは完全にシステムが導入されており、過去に中国研修をした妻もここ数年での変貌に驚きを隠せない様子でした。

この中医院でビックリだったのが、患者のすぐ横に次の患者が座って待っていること。日本じゃプライバシーの問題で絶対にあり得ないだろうけど。時には「早く終わってよー」みたいな感じで次の患者が催促してくることにお国柄というか、日本じゃ考えられないなと思いました。

午後には梅幹英老中医による講義も受け、とっても充実した病院研修となりました。

病院内に設置してあった東洋医学的養生の資料を少しばかり拝借したのですが、全く中国語が分からないのでスマホの自動翻訳に頼って店内のお客さん配布用を作ろうと今頑張っております！

その日の晩はあの「大地の子」のラストシーンでも登場した長江をクルーズして、まるで上川隆也と仲代達矢の気持ちをわずかでも味わうことができたようで、とってもとっても内容のある濃い１日となりました。

パート３へ続く

先月中国に研修に行ってまいりました。

妻は何度も行ったことのある中国ですが、私は今回が初めての訪中。

１９歳かそこらの頃にNHKのドラマで山崎豊子原作の「大地の子」を見て毎回涙していたことを思い出しつつ、いつしか踏みしめてみたいと思った大地に２０年経ってようやく思いが叶いました。

今回の研修先は湖北省武漢市。湖北省には名前の通り数多くの湖が点在し、訪れた武漢市は上海市と、ジャイアントパンダで有名な成都市とを結んだちょうど真ん中辺りに位置します。また大地の子のラストシーンにも登場する長江が市内を流れる街でもあります。規模は中国国内で中都市と言われていますが、それでも人口は１３００万人もいるそうです。
インフラもきっちり整備されており、国際空港も新しく完成したばかりで、とにかくキレイで洗練された建物になっていました。

当たり前ではありますが、ドラマでイメージしていた中国の姿は見る影もなく、経済が停滞していると言われているものの、その発展とエネルギーには驚かされました。

便が予定より遅れてしまったことと、共産党の党大会を間近に控えていたせいか入国審査に意外と時間がかかり、深夜のチェックインとなってしまいました。
渡航前から「LINEやgoogleは一切使えないよ」と聞いていたので、なかなか厳しいお国だなと思いながら、直ぐには寝付けずにいたのでテレビをみていると、日本のアニメの番宣を普通にしていたので、そこの規制は意外と緩くてなんだか不思議な気分でした。

研修初日は車に３時間揺られて国家級京山盛昌中華草亀良種場（漢方製剤に使用される亀の養殖地）の視察へ。

東京ドーム２００個分以上に相当する広大な土地に農薬を使わずに育てた稲や自然そのままの植物を餌に、生き物本来の食物連鎖で育てている環境にはとても感動しました（ちなみに中国、韓国、日本は農薬大国と言われており、アメリカやヨーロッパ諸国の同耕地面積に対する農薬使用量が６倍以上使われている）。

この養殖場はその規模と質がとても優れているということから中国全土の農場・養殖場の中でも１０本の指に入るほどの施設に認定されているそうです。

ここでは毎年３００万匹の子亀が生まれ、５年間にしっかりと生育するまでに時間をかけて漢方の原材料となります。

一部には古来から皇帝に献上したお米の品種の稲を食べている養殖池があったり、全ての池の水も地下２００mからくみ上げて使用するなど、一つ一つに大変こだわりを持って養殖に取り組んでいることが分かり、とても実のある視察となりました。

漢方の原材料となる生薬・亀の甲羅は亀板（亀板膠）といって

【帰経（体のどこに作用するか）】腎　心　肝
【効能】補腎填精　滋陰潜陽　強筋健骨　養血補心

です。一番は「補腎」。とにかく腎の強化です。
前回のブログでもお伝えしたように、近年は西洋医学でも腎臓の働きが脳以上に重要な役割を果たしていることが最新の研究で判明しており、それは古来から続く東洋医学においても同等のことが云えます。

「かんじんかなめ」の「かんじん」は「肝心」ではなく「肝腎」で表記することが私たちの分野では当たり前となっており、腎の働きは水液代謝・骨代謝・内分泌・呼吸・免疫・生殖・成熟・老化・脳・髪・耳・腰足・膀胱に多岐に渡ると考えます。

例えば腎臓ではカルシウムを丈夫にする活性型ビタミンDの生成が行われます。
「腎＝骨」とイメージではすぐには結びつかないようなことも中国伝統医学では２０００年近く前から、解剖学や成分分析などに頼らずとも観察学のみでその理論体型を構築し、その考え方が現代の医学にも通用するところがいつも驚かされる点です。

腎臓が寿命を決めるという内容が先日のNHKの番組内（人体ー神秘の巨大ネットワーク）でも触れられていましたが、世界一長寿の生き物である亀から生成される亀板をしっかりと漢方として飲んで腎を強化することで、元気に長生き目指せれると良いですね。

ちなみにこの養殖池で育てられている中華亀の平均寿命は２００年だそうです。

施設の方々からお昼に招待され、案の定、亀のお肉を頂戴してきました。
ほとんどゼラチン質であまり食べられる部位がなかったけど、味付けはとっても美味しかったです。

なぜ亀がそこまで長寿なのか、どのような効果が得られるのか、２４０種類以上いる亀の中でどの亀が効果が高いのかなどを科学的に研究する施設も併設されていました。
最新の研究では２年後に亀の甲羅による抗腫瘍作用が中国国内で特許の認可が決まっているそうです。

最後に施設の方から亀板（亀の甲羅）のお土産をいただきました。
この亀板を３日間コトコト煎じて漢方になります。

当店ではこの養殖池で育った亀を元に作られた亀板を使用している漢方が亀鹿仙になります。
様々な働きを司る「腎」を強化する補腎作用の漢方の中でも、特に頼りになるオススメの逸品です！
飲みきりサイズのペーストタイプで手軽に飲みやすくなっていますので、興味のある方はお気軽にお声がけください。
味見もできますよー

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